「テスト環境が1つしかないから、確認が進まない」──その悩み、どこに原因があるんだろう?
「リリース前のテスト環境が1つしかないので、テストがやりづらくリリースまでに時間がかかる」
この言葉、みなさんのチームでも聞いたことがありませんか?
私たちも現場でよく耳にしますし、「なんとかしたい」と頭を抱える場面もしばしばです。
今回はこの一言をきっかけに、「なぜこの問題が起きてしまうのか?」「どうすれば少しでもラクになるのか?」を、チームの視点から一緒に掘り下げてみたいと思います。
「テスト環境が1つしかない」って、実際どういう状況?
これはあるチームでの実際の話です。
開発が順調に進み、いよいよリリースに向けて最終確認──そんなフェーズに差し掛かっていました。
ところが、使えるステージング環境は1つだけ。
並行で開発している複数の機能が互いに干渉し合ってしまい、検証がうまく進まない。
しかも、その環境はQAチームの確認にも使われているため、勝手にデプロイすることもできない。
夜中や早朝を狙って動作確認をする。誰かの作業が終わるのをただ待つ──そんな環境の“順番待ち”が日常的になっていく中で、あるエンジニアがふと漏らしたのが、冒頭の言葉でした。
テスト環境が1つしかないから、確認が進まない
登場人物とそれぞれの立場
この問題、実は「環境をもう一個増やせば解決」みたいに単純な話ではありません。
いろんな立場の人が、それぞれの視点でこの状況と向き合っています。
ここでは、その関係者たちの立場と視点を少し整理してみます。
👨💻 エンジニア(開発担当)
役割:新機能の実装、バグ修正、検証など、プロダクトのコードを書く中心的存在。
考えていること:
「プログラムを修正してもすぐに確認できない。環境の順番待ちで、タスクが終わらない…」
🔍 QAエンジニア(品質保証担当)
役割:リリース前に機能やUIが仕様通りに動作しているかをチェックし、不具合を見つけ出す専門職。
考えていること:
「確認中に他の変更が入ってくると困る。できれば安定した環境でじっくり確認したい…」
👔 エンジニアマネージャー(開発チームのマネジメント)
役割:エンジニアのタスク進行やモチベーション管理、リソース配分、リリーススケジュールへの責任も担う。
考えていること:
「エンジニアには気持ちよく開発してほしいけど、リソースは限られている。進捗を止めるわけにはいかない…」
📋 プロジェクトマネージャー(PM)
役割:開発チーム全体の進捗管理、関係者との調整、リリース日程の調整や判断を担う。
考えていること:
「誰が何をどこまで終えていて、次に何が必要なのかが見えにくい…リリース判断が難しい…」
🧑🔧 インフラ担当/SRE(Site Reliability Engineer)
役割:開発や運用に必要なインフラの設計・構築・保守を担当。ステージングや本番環境の安定稼働を支える裏方のプロ。
考えていること:
「環境を増やしたい気持ちはわかる。でも増やすにはコストも手間もかかるし、今の仕組みではスケールさせづらい…」
このように、どの立場にも、ちゃんとした理由があり、簡単に「じゃあもう1つ環境を用意しよう!」とはならないのが現実です。
この問題の“本当の顔”とは何か?
表面上は「環境が足りない」ように見えて、実はもっと根っこの課題が潜んでいる気がしています。
たとえば、こんな言い換えができるかもしれません。
「開発チームが、必要なタイミングで、必要な検証をできる仕組みが足りていない」
そしてその背景には、
- 並列開発に対応しきれていないプロセス
- 環境の運用ルールのあいまいさ
- 増えた人数・機能に対して、仕組みが追いついていない
といった、構造的なボトルネックがあるようにも感じます。
「似たようなセリフ」、あなたの現場にもありませんか?
- 「誰かがステージングを使ってるから確認できない」
- 「自分の検証だけしたいけど、他の機能が入ってて動作が壊れる」
- 「環境のデプロイ順で揉めて、作業が止まる」
- 「夜間バッチの確認中にデプロイされてしまった…」
どれも一見「些細なやりづらさ」ですが、これらが積み重なると、開発スピードは確実に落ちていきます。
本質は、「環境」そのものではない
テスト環境の数の問題は、氷山の一角。
その下には、
- 開発体制の設計
- 検証プロセスの柔軟性
- 環境のスケーラビリティ
- チーム間の調整コスト
といった、見えにくいけれど重要な要素が眠っています。
原因 〜仮説ベースで考える〜
「なぜ、こんな状況になってしまうんだろう?」
この問いに対して、私たちがこれまで見てきた現場やチームの中で感じてきた、いくつかの“よくある背景”を仮説として挙げてみます。
仮説1:ステージング環境が“特別なもの”になっている
ステージング環境は「本番に近い最後の砦」であり、デプロイにも申請が必要など、扱いが慎重すぎる。
結果的に、「好きなタイミングで自由に使えない」「検証の順番待ちが発生する」状況に。
仮説2:環境を動的に作る技術的な仕組みがない
環境を複数用意したくても、手動で構成されているため再現が難しい or 時間がかかる。
CI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)の仕組みが未整備、またはテンプレート化されていない場合によくあるパターン。
仮説3:インフラコストやリソースの見積もりが甘かった
「とりあえず1つあれば十分だろう」と思って始めたが、開発規模、開発の人員が想定以上に大きくなった。
特にスタートアップや初期プロジェクトなどでは、将来的なスケーラビリティまで想定されていないことが多いです。
仮説4:環境管理の責任が曖昧になっている
誰が環境を使ってよいのか、どういうルールで管理されているのかが曖昧。
結果的に「使いたいけど触っていいか分からない」「勝手に上書きされる」などのストレスが発生し、非効率を助長します。
解決策:現場でよく使われるアプローチとは?
ここでは、「実際に他の現場で効果があったアプローチ」を紹介してみます。
どれも一発で解決!という魔法ではありませんが、小さな工夫が積み重なることで、環境のストレスがぐっと減っていくこともあるなと感じています。
解決策1:オンデマンド環境の仕組みを導入する
例:GitHub Actions × Terraform × Vercel/Netlify、などを組み合わせて構築
✅ 並列開発がしやすくなる
✅ ステージング環境の奪い合いが減る
解決策2:インフラのIaC(Infrastructure as Code)化
✔️ 環境の複製が容易になる
✔️ テスト用のミニ環境も構築しやすくなる
解決策3:環境利用ルールやスケジュールを明確化する
物理的に環境を増やせない場合でも、**「誰がいつ使うのか」**のルールを明確にすることで衝突を減らせることがあります。
Google Calendarやスプレッドシートでの運用も一時的には有効。
解決策4:ローカル or モック環境での検証範囲を拡張する
環境依存を極力減らし、開発者がローカルで完結できるような設計やツール整備を進めることで、ステージングの使用頻度を下げる。
例:MSW(Mock Service Worker)でAPIをモック化する、など。
まずはここから:すぐに始められる4つの工夫
一気に環境を自動化!…みたいな話は理想としてはありますが、現実的には「まず何からやるか」が一番悩ましいポイントだったりしますよね。
私たちがこれまで試してきた中で、「これは最初の一歩として良かった」と思えた工夫をいくつか紹介してみます。
Pull Requestごとに「一時環境を用意する運用」を検討してみる
最初は仕組みを入れなくても、ステージング環境を時間単位で割り振るような簡易運用でもOK。
余裕が出てきたら、オンデマンド環境の仕組みを導入する。
「環境の利用ログ」を残すようにしてみる
SlackやNotion、スプレッドシートでもいいので、「誰がいつ何のために使っているか」を見える化する。
予期せぬ上書きや衝突がぐっと減る。
「ステージングに何を上げるか」を事前に合意する
機能の粒度を整理し、「この機能とこの機能は一緒にテストしても問題ない」といった粒度で検証の単位を明確にしておく。
モックやローカルで確認できる領域を少しずつ広げる
APIモック、Storybookを使ったUIコンポーネントのテスト、Fakerライブラリを使ったデータシミュレーションなど、テスト環境を使わなくても済む範囲を増やす工夫は積み重ねが効いてきます。
おわりに
テスト環境の問題は、どうしても後回しにされがちだけど、振り返ると「一番しんどかったところ」でもある。
開発者、QA、マネージャー、インフラ担当──
誰にとっても、「安心して作って試せる環境」があるだけで、開発の体験は大きく変わると思っています。
私たち自身も、まだまだ試行錯誤の連続です。
でも、悩みながら工夫してきた中で、「これは効果があった」と思えたことが、どこかのチームのヒントになれば嬉しいです。
ちなみに…私たちの支援内容について
実は、この記事で紹介してきたような工夫や仕組みづくり──
- オンデマンド環境の自動構築
- IaCによる環境の再現性向上
- CI/CDの整備と運用支援
- モック・データシミュレーションの仕組み化
- チームにあった環境戦略の設計と定着支援
弊社では、こうした支援を実際に企業様と一緒に取り組んでいます。
「いま困っているけれど、何から始めればいいか分からない」
「チームの文化や規模に合ったやり方を見つけたい」
そんな時は、ぜひ気軽にご相談ください。
一緒に考えるところから、お手伝いさせてください。
関連する技術ブログ
フロントエンド開発に役立つモックサーバー構築:@graphql-tools/mock と Faker を使った実践ガイド
フロントエンド開発を先行させるために、バックエンドが未完成でもモックサーバーを立ち上げる方法を解説。@graphql-tools/mock と Faker を使用して、実際のデータに近い動作をシミュレートします。
shinagawa-web.com
Mock Service Worker (MSW) を使ったAPIモックとテストの効率化
MSW(Mock Service Worker)を使用して、フロントエンド開発やテスト環境でのAPIモックを効率的に行う方法を解説します。Mock Service Workerの基本的な使い方から、Jestテストでの活用方法、さらにテストを簡単にするための設定手順を紹介します。
shinagawa-web.com
フロントエンドのテスト自動化戦略:Jest・Playwright・MSW を活用したユニット・E2E・API テスト最適化
フロントエンド開発において、品質を担保しながら効率的に開発を進めるためには、適切なテストの自動化が不可欠です。本記事では、Jest や Vitest を活用したユニットテストの導入・強化、React Testing Library や Storybook との統合によるコンポーネントテストの最適化、Playwright / Cypress を用いた E2E テストの拡充について詳しく解説します。さらに、Supertest や MSW を活用した API テストの自動化、Faker / GraphQL Mock によるモックデータの整理、CI/CD パイプラインにおける並列実行やキャッシュ活用による最適化など、テストを効果的に運用するための手法を紹介。また、Codecov / SonarQube によるテストカバレッジの可視化や、フィーチャーフラグを考慮したテスト戦略の策定についても解説し、実践的なアプローチを提案します。テストの信頼性と効率を向上させ、開発プロセスを強化したいフロントエンドエンジニア必見の内容です。
shinagawa-web.com
GraphQL・REST API の堅牢な認可設計:RBAC・ABAC・OAuth 2.0 のベストプラクティス
GraphQL & REST API の堅牢な認可設計を構築する方法とは?RBAC・ABAC の活用、Rate Limiting、API Gateway、監視のベストプラクティスをまとめました。
shinagawa-web.com
キャッシュ戦略完全ガイド:CDN・Redis・API最適化でパフォーマンスを最大化
Webアプリの高速化には、適切なキャッシュ戦略が不可欠。本記事では、CDN(Cloudflare / AWS CloudFront)による静的コンテンツ配信、Redis / Memcached を活用したデータベース負荷軽減、APIレスポンスキャッシュ(GraphQL / REST API)など、キャッシュを駆使してパフォーマンスを向上させる方法を解説。TTL設定、Next.js ISR / SSG のプリフェッチ、クエリキャッシュ(React Query / Apollo Client)、キャッシュヒット率の分析など、実践的なノウハウも紹介します。
shinagawa-web.com
弊社の技術支援サービス
無駄なコストを削減し、投資対効果を最大化する
クラウド費用の高騰、不要なSaaSの乱立、開発工数の増加――これらの課題に悩んでいませんか?本サービスでは、クラウドコストの最適化、開発効率向上、技術選定の最適化 を通じて、単なるコスト削減ではなく、ROIを最大化する最適解 をご提案します。
shinagawa-web.com
最新技術の導入・検証を支援するPoCサービス
Remix、React Server Components、TypeScript移行、クラウドサービス比較、マイクロサービス、サーバーレス、デザインシステムなど、最新技術のPoC(概念実証)を通じて、最適な技術選定と導入を支援します。貴社の開発課題に合わせた検証・実装で、ビジネスの成長を加速させます。
shinagawa-web.com
開発生産性を最大化するための支援サービス
開発チームの生産性向上、コードの品質管理、インフラの最適化まで、様々な側面からサポートします。コードベースのリファクタリングから、テスト自動化、オンボーディング強化まで、プロジェクトの成功に必要なすべての支援を提供。御社の開発現場が効率的に機能するように、技術的な障害を取り除き、スムーズな開発を実現します。
shinagawa-web.com
開発品質向上支援 – 効率的で安定したプロダクトを実現
フロントエンドからバックエンド、データベースまで、開発プロセス全体を最適化し、安定したプロダクト作りをサポートします。コードレビューの仕組み、型定義の強化、E2Eテスト環境の構築など、開発の各ステップにおけるベストプラクティスを導入することで、より効率的でバグの少ない、そしてユーザー満足度の高いサービス提供を支援します。
shinagawa-web.com
Webアプリのセキュリティ強化支援
Webアプリの脆弱性対策からインフラのセキュリティ強化まで、包括的なセキュリティ支援を提供。OWASP Top 10対策、JWT認証の最適化、APIのアクセス制御、依存パッケージの監査、セキュアコーディングの標準化など、実践的なアプローチで開発現場の安全性を向上させます。
shinagawa-web.com
目次
お問い合わせ