小さく始めて、大きく変わる。技術支援の進め方

セキュリティ、テスト、レビュー、パフォーマンス改善——現場で起きる“技術のズレを解消し、再現性ある仕組みに変えていく支援の全体像を紹介します。

支援スタイルの全体像

── 変化は、一気に起こすものではなく、育てていくもの。

私たちがご提供している技術支援は、いわゆる「短期集中型」のコンサルティングや「特定領域に特化したアドバイス」にとどまりません。
2〜3年という中長期のスパンで、現場と経営のあいだに立ち、“構造的なズレを再発しないかたちで解消していくことを目指しています。

そのため、私たちの支援スタイルにはいくつかの特徴があります。

なぜ「小さく始める」のか

最初から全体を変えようとするのではなく、まずは「着手可能で、かつ効果が見込める領域」から始めます。それは、セキュリティレビューの導入かもしれませんし、レビュー観点の整理、あるいは監視ツールのダッシュボード改善かもしれません。

こうした“スモールスタートによる変化は、次の改善への着手を促すきっかけにもなります。
実際に改善がかたちになって見えると、関わるメンバーの納得感が増し、「変えていけるんだ」という実感とモチベーションにつながっていきます。

そして、小さな違和感を一つずつ解消することで、背後にある構造的な問題の根っこが見えてくる。それが、私たちが大切にしている第一歩です。

なぜ「長く続ける」のか

構造的な課題というのは、一度直して終わりというものではなく、変化を受け入れ、自然に運用し続けられる“文化や“判断の習慣を育てていくことが必要です。

たとえば──

  • 「なんとなく違和感があるけれど指摘しづらい」状態を、
  • 「どこにズレがあるのかをチームで言語化できる」状態へ
  • 「判断の根拠や観点が暗黙知ではなく、チームで共有できている」状態へ

こうした変化は、仕組みだけでは生まれません。
日々のやりとり、判断、レビュー、ふりかえりの中に“よい問いかけや“よい型が浸透していくことによって、はじめて「ズレを自分たちで検知し、修正できる組織」へと育っていきます。

私たちは、特定の領域だけを整えるのではなく、

  • チームがなぜズレるのか
  • どうすれば再発しないか
  • その“判断力をどのように組織全体に根付かせるか

といった視点から、段階的に改善し、仕組みとして再現性を持たせるところまで支援します。

実装と構造、両方に向き合う

支援は提案やアドバイスだけではありません。
私たちはコードも読みますし、必要があれば実装も行います。SlackやNotionに入り、PRレビューに参加することもあります。構造と現場、両方に並走することで、表面的な対症療法ではなく、本質的な改善が可能になります。

まずは「ここから」でも構いません

長期的に関わるスタイルではありますが、「最初から全部お願いしないといけない」ということはありません。

  • セキュリティを強化したい
  • コードレビューの観点を整理したい
  • 要件定義のやり方を見直したい

といった具体的なリクエストからでも支援はスタートできます。
そこから現場に入り、小さな改善を積み重ねながら、徐々に全体の構造改善へとつなげていきます。

技術支援のステップ

── 技術と構造に両輪で向き合いながら、変化を積み重ねる

私たちの支援は、2〜3年という中長期の期間をかけて、チームの“構造的なズレを根本から解消していくための伴走型の技術支援です。

支援はあくまで「型にはめる」ものではなく、現場の状況・チーム構成・課題の優先度に応じて柔軟に設計・調整していきます。

フェーズ① 現場入り・把握フェーズ(0.5〜1ヶ月)

まずはコードベースや開発体制、設計思想、ドキュメント、オンボーディングプロセスなどを観察・把握します。

  • コードベースや設計思想、依存関係の把握
  • 新規参画者に近い視点でのオンボーディング体験
  • Good First Issueを通して開発プロセスの把握
  • ツール(GitHub、Figma、監視基盤など)の運用実態の確認
  • 経営/現場メンバーからのヒアリング

技術的なボトルネックや歪みの兆しを発見しつつ、チームの得意/不得意も整理し、どこに技術的介入が必要かを見極めます。

得られるもの:

  • 改善優先度リスト(構造面/技術面)
  • 初期着手テーマの決定

フェーズ② 初期着手フェーズ(1〜6ヶ月)

把握した構造と仮説をもとに、「まずここから整えると効果が出る」ポイントに優先的に着手します。

  • セキュリティ観点のレビュー導入とトレーニング
  • 自動テストの導入支援と失敗ケースの分析
  • パフォーマンスに関するボトルネック調査
  • 導入が進んでいない新技術の活用設計(例:CI/CDの再設計、静的解析など)

支援の内容は「実作業」ベースです。
SlackやNotionに入り、PRレビューに参加し、ツールやプロセスを共に整えていくところから関わります。

成果物の例:

  • 実装済み機能の改善やテンプレート作成
  • ドキュメントやナレッジの初期整備
  • 「判断の基準」が明文化されたリストやガイドライン

「チームが手をつけづらい技術領域」に私たちが深く入り込み、コードレベルでのリードを行うことがこのフェーズのポイントです。

フェーズ③ 継続支援・PDCAフェーズ(4ヶ月目〜)

ここからは支援の重心が「改善+仕組み化」の両立へと移行していきます。

  • 実装支援(ツール導入、レビュー、改善パッチなど)と並行して、
  • ナレッジやプロセスを運用に載せるための仕組み設計を進めます

また、技術スタックやエンジニアの特性によって、チーム内に偏りがある場合は、その“空白を私たちが埋めるように介入していきます。

例:テストやセキュリティ領域が薄いチーム → 自動化やセキュリティトレーニングの設計をリード
例:新技術に抵抗感がある → 導入PoCや効果測定の支援を行い、自信を持って運用できるように並走

このフェーズでは、実装:仕組みづくり=半々くらいの比重で進めるケースが多くなります。

フェーズ④ 自走支援・仕組み定着フェーズ(1年〜)

「支援がなくてもチームが継続的に改善し続けられる状態」をゴールに据えます。

  • 定期ふりかえり/レビュー文化の言語化と定着
  • テスト/監視/セキュリティルールの運用設計
  • 判断軸を残すための資料整備と教育設計

「文化として続く」状態を実現するため、構造を仕組みに落とし込み、技術と運用の両面で再現性を担保していきます。


全体として、各フェーズの長さや内容は一律ではなく、状況に応じて前後・反復・融合しながら進んでいくものです。

大事なのは、「どこから始めるか」よりも、「何を変えていくか」。
次章では、その始めやすい着手ポイントをご紹介します。

着手テーマの柔軟性

── 「ここからやってほしい」に、柔軟に応える技術支援

中長期の支援スタイルとはいえ、最初から全体を委ねていただく必要はありません。
むしろ、最初の入口は「この部分を整えたい」「ここがなんとなくうまくいっていない」といった具体的なテーマや違和感であることが多くあります。

私たちは、そうした“局所的なスタートから入り、実作業を通じて改善をかたちにしながら、徐々に構造的な課題へと踏み込んでいく支援を行っています。

たとえば、こんな入口から始められます

セキュリティ対策をちゃんとしたい

「セキュリティレビューを導入したい」
「誰が何をチェックすればいいかが曖昧」

  • 設計時・実装時におけるセキュリティ観点の整理
  • プロダクト仕様とセキュリティポリシーのすり合わせ
  • チームに合ったセキュリティレビューの体制設計と支援

✅ 即着手可能

テストの信頼性を高めたい

「テストが形骸化していて不安」
「レビューで抜け漏れが多い気がする」

  • テスト観点の明文化とレビュー基準の設計
  • E2Eテスト/ユニットテストの再設計と整備支援
  • テスト失敗ケースの分析と、改善のループづくり

✅ 即着手可能

パフォーマンスの課題を見える化したい

「最近レスポンスが遅くなってきた」
「メトリクスを見ているが、改善につながらない」

  • モニタリング項目の再設計とダッシュボード整備
  • 性能劣化の傾向分析と改善パッチの実装支援
  • チームでの振り返りに活かす“観点の定着支援

🟡 現場状況を把握の上で着手

要件定義・合意形成を強化したい

「作ったあとに“それ違うって言われることがある」
「なんとなく会話が噛み合ってない」

  • プロトタイピングによる要件の具体化支援
  • ユースケース・業務フローの整理と粒度調整
  • レビュー設計の再構築と“認識のすり合わせ支援

🟡 チーム状況に応じて着手可能

新しい技術を導入したいが不安

「今の技術スタックに限界を感じている」
「新しい技術を試したいけど失敗したくない」

  • 技術選定支援とPoC(技術検証)の設計・実装
  • チームに適した導入方法の提案と展開サポート
  • CI/CDや静的解析ツールなどの刷新・再設計支援

🟡 体制や導入背景に応じて調整

ドキュメントが散らかっていて不安

「仕様や設計の共有が属人化している」
「引き継ぎが難しくて、誰も正解がわからない」

  • 説明責任ベースの設計ドキュメント整理支援
  • ワークフローと合わせたドキュメント運用ルール設計
  • ドキュメント更新の“習慣化支援

✅ 即着手可能

レビューを形骸化させたくない

「PRは通ってるけど、何を見てるか分からない」
「観点が属人化していて不安」

  • レビュー観点の可視化と標準化
  • レビューガイドの作成とチーム内トレーニング
  • ペアレビューやレビュー支援ツール導入の検討

✅ 即着手可能

リリース後のズレを減らしたい

「本番に出したあとに“なんか違うが起きる」
「設計時点での認識とユーザーの反応が食い違う」

  • ユーザー視点の観点洗い出しワークショップ
  • フィードバックを仕様に還元するフロー整備
  • 実装〜仕様〜UXを横断して見るレビュー支援

✅ 即着手可能

新メンバーのオンボーディングがうまくいかない

「キャッチアップに時間がかかりすぎる」
「教える人によって説明が違う」

  • 学習フロー・参照ドキュメントの整備と運用支援
  • ハンズオン資料やプロジェクト読み解きガイドの作成
  • コードベースからのキャッチアップ設計支援

🟡 現場状況に応じてカスタマイズ

他チームとの連携に齟齬がある

「営業やCSと、同じ言葉で違うことを言っている」
「立場が違うと目的の捉え方がずれてしまう」

  • チーム横断の共通言語/仕様レベル整理
  • 合意形成の場・ドキュメントの構造設計
  • 部門ごとの優先度を擦り合わせる判断軸づくり

🟡 ヒアリングと観察をもとに設計・支援

不得意な領域を補い、チームの盲点を埋める

エンジニアの集団には、それぞれ得意・不得意の技術領域があります。
私たちは、そのチーム構成や文化を尊重しつつ、特に以下のような放置されがちだけど影響が大きい領域に対して、技術的に深く関わって支援することが可能です。

  • セキュリティ:設計段階からのレビュー導入と観点トレーニング
  • 自動テスト:E2E/ユニットテストの設計・整備・仕組み化
  • パフォーマンス:モニタリング設計とボトルネック解消支援
  • 新技術導入:PoC・導入支援・移行戦略の策定と実装並走

「ここが弱いけど手が回らない」という部分を技術でリードすることで、チーム全体の安定性と柔軟性を底上げします。

着手後は、構造改善へと自然につながっていく

最初はひとつの施策から始めたとしても、実際に支援が進むと…

  • 「レビューの観点が整理されたことで、チームの会話が変わった」
  • 「セキュリティのルールが明文化されたことで、設計時の判断が楽になった」
  • 「モニタリングを見るだけから判断に使えるようになった」

といった手応えが現れます。
そこから自然と、設計の構造やチーム内の意思決定プロセスへと支援の幅が広がっていきます。

よくある質問

──「全部任せないといけないの?」「技術的な作業もしてくれるの?」そんな疑問にお答えします

Q. 最初から全部お任せしないといけませんか?

いいえ。特定のテーマや領域だけのご相談でもまったく問題ありません。
むしろ、私たちがご一緒してきた現場の多くは、「レビューを強化したい」「セキュリティ対策から見てほしい」といった、具体的な課題からのスタートがほとんどです。

Q. 実際にコードを書いたり、手を動かしてもらえるんですか?

はい。提案や助言だけでなく、コードの読み書きや実装レベルの作業にも関わります。
PRレビューへの参加、改善パッチの作成、プロトタイプの実装、監視設計のリファクタなど、現場に入って手を動かすスタイルが基本です。

Q. 他社の技術顧問やPM支援と何が違うのでしょうか?

私たちは、技術という軸を持ちながら、経営・現場の構造課題まで見て動ける点が特長です。
単にアドバイスをするだけでなく、「ズレ」が起きる背景を読み解き、それを再発させない仕組みに落とし込むまでを支援範囲としています。

Q. 支援期間に決まりはありますか?短期間でもお願いできますか?

基本的には2〜3年の中長期的な伴走支援を前提としていますが、スポット的なご相談や短期の実作業支援にも柔軟に対応可能です。
状況や目的に応じて、関わり方をご提案します。

Q. 他の支援と並行してお願いできますか?

もちろん可能です。現在すでに顧問やパートナーがいる場合も、役割が重複しないよう調整しながら関わります。
たとえば「技術的な支援はあるけれど、構造まで見切れていない」といった状況にも対応できます。

Q. 開発チームが技術的に成熟していないのですが、それでも依頼できますか?

はい、むしろそういった場面こそ、私たちの支援が活きます。
テスト、セキュリティ、パフォーマンスなど、後回しにされやすい領域を一緒に整えていくことも、私たちの得意分野のひとつです。

Q. 情報の取り扱いや守秘義務が心配です。

ご安心ください。契約時にはNDA(秘密保持契約)を締結し、情報管理体制を徹底しています。
Slack、GitHub、ドキュメントツール等へのアクセス権限についても、必要最小限にとどめる設計で進めます。

Q. フルリモートでも支援は可能ですか?

はい、基本的にはオンラインでの支援を前提としています。
Slack、Notion、Zoom、Miroなどを活用し、日常的なやり取りからワークショップまで、すべてリモートで進行可能です。
必要に応じて、スポットでの対面参加や出張対応も検討できます。

Q. 技術領域が特殊ですが、それでも依頼できますか?

一度ご相談ください。
**支援の焦点は「技術の種類」ではなく「技術をどう組織に根付かせるか」**にあります。
たとえば業務特化のシステムやレガシーな構成でも、要件整理や改善の糸口は見つかります。

Q. 支援の成果はどのように測りますか?

「何を変えたいか」「どうなれば満足か」を事前にすり合わせたうえで、定性的・定量的な両面から振り返りを行います。
改善施策ごとに効果検証の方法をご提案し、必要であればKPI設計のご支援も可能です。

Q. 費用感について教えてください。

支援内容や体制、稼働のボリュームによって変動します。
月額での継続契約が基本ですが、まずはご相談いただき、貴社に合った関わり方をご提案します。
初回ヒアリング・見積り提案までは無料です。

Q. チームの文化が特殊で、外部が入りづらいかもしれません…

ご安心ください。
「現場になじみながら、外の視点で構造を見直す」ことこそ、私たちが得意とするスタンスです。
SlackやNotionに入り、自然な形でチームと関わりながら、少しずつ改善の余地を見つけていきます。

Q. 手を動かしてもらうとはいえ、どの程度までお願いできますか?

実装支援の深さは、現場の状況と私たちの役割に応じて柔軟に調整可能です。
たとえば「一部の機能実装やレビューを任せたい」「プロトタイピングや設計整理までやってほしい」など、ご要望に応じた関わり方をご相談いただけます。

Q. メンバーが途中で変わることはありますか?

原則として、担当者は継続的に関わり続けます。
チームとの信頼関係やドメイン理解を重視しており、支援途中での交代は極力避ける体制を取っています。

ご相談の流れ

── 「まだふわっとしているけれど…」という段階からでも歓迎です

「構造的なズレがありそうだけど、どこから手をつけていいか分からない」
「なんとなく違和感があるけれど、課題としてはっきりと言語化できていない」
そんな状態でも、まずはお話を伺うことから始められます。

1. 初回ヒアリング(無料)

  • 経営・事業・開発など、どこに違和感や悩みがあるかをざっくばらんに伺います
  • テーマが明確でなくても問題ありません
  • ざっくりした現場の状況をもとに、「支援できそうなポイント」をご提案します

📄 所要時間:60分程度(オンライン)
💬 ご希望に応じて、現場のメンバーと一緒に参加いただくことも可能です

2. 現状の構造整理と初期提案

  • 初回ヒアリングをもとに、現場の構造課題や技術的改善ポイントを仮説として整理
  • 「まずここから始めるとよさそう」という初期支援プランのたたき案をご提示します
  • ご希望の進め方(柔軟に少しずつ/一気にやる など)も伺います

3. 契約・支援スタート

  • ご提案内容とご要望のすり合わせ後、ご契約・支援開始
  • Slack、Notion、GitHubなどに必要に応じて参加し、自然なかたちでチームと関わりながら実作業に入ります

4. 支援の進行とふりかえり

  • 実作業を通じて改善を進めながら、効果のふりかえりと課題の再整理を定期的に実施
  • 支援フェーズや対象テーマは、チームの状態に合わせて柔軟に調整していきます

「まずは話してみたい」「構造が気になっているけど迷っている」——
そんな段階でも、遠慮なくご相談ください。

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システムと組織、両方に効く改善で、
利益に直結する開発体制を築きます。

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